ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

一日千五百円生活

 いま、自分には何もやることがない。

 

 最近、ぼくがいちばんたのしいことは音楽を聴くことだという気がする。本を読むことでも、映画を見ることでもなく、音楽を聴くことがいま、いちばんたのしい。いまも、音楽を聴いている。いまは家主というバンドの新譜を聴いている。イヤホンをつかって聴いている。

 音楽を聴くのが好きになってくると、気になってくることの一つに音質があるんじゃないかとおもう。なるべくいい音で音楽を聴きたいとおもうようになるはずだ。考えてみるとスマホはもともと音楽を聴く道具ではないので、音質はよくないのではないか? とおもっている。それで考えたんだけれど、スマホのスピーカーから聴くよりかは、もともと音楽を聴くための専用のイヤホンを、スマホに接続してそれを耳にさして聴くほうがいい音で聴けるのではないか? これはたぶん、正解だとおもう。

そう考えて、そのことをツイッターに書いたら、フォロワーに中華イヤホンをお勧めされた。中華イヤホンは値段の割には音がいいらしい。いろいろ調べてみると、いま、中国製のイヤホンはその性能のよさで世界から注目されているのだそうだ。早速、アマゾンで注文してみた。二千四百円くらいだった。届くのがたのしみだ。

 ところで、最近のイヤホンにはワイヤレスという選択もあるらしい。イヤホンは、線でスマホと繋がっているのがぼくの世代からすると普通なのだけれど、その線がないイヤホンが出てきた。最初は意味がよくわからなかったんだけれど、考えてみると、線がないと、そのぶん身体の動きが制限されなくて、自由だ。たとえば、ぼくは、家事をしながら音楽を聴くことが多い。イヤホンの線があると家事をしながら音楽を聴くのには不便だ。ワイヤレスだとそういうとき、身体の動きが制限されないぶん便利なのだ。最近のひとはナイスなことを考えるな、とおもった。

 でも、そのワイヤレスには身体の動きを制限されないというメリットがある一方で、音質は有線に劣るというデメリットがあるらしい。ワイヤレスだと充電が必要なこともある。ぼくは音質にこだわりたいという理由で、今回はワイヤレスをあきらめて有線のイヤホンを注文した。でも、身体の動きを制限されずにイヤホンで音楽を聴けるということには魅力をかんじるので、かなり迷った。

 イヤホンのことを調べてから電車に乗ったりすると、イヤホンを着けているひとが気になる。よく見ると、ワイヤレスイヤホンを着けているひとはかなり多いのだ、ということにも気がついた。若いひとばかりではなく、ぼくと同年代のサラリーマンが耳にワイヤレスイヤホンをさしているのも見た。ぼくがボンヤリしているあいだに、世の中は着実に変わっていっているようだ。

 というのがイヤホンの話だった。

 

きのう、グラコロを食べた。グラコロマクドナルドの冬の限定商品らしい。グラコロというのはつまり、グラタンコロッケの略だろう。ツイッターで話題になっていたので気になっていた。また、テレビのCMで多部未華子が出ているのにも注目していた。最近、なんとなく、元気が出ない。心の栄養が足りていない気がする。心の栄養が足りていないときはジャンクフードが食べたくなる。そういう理由で、グラコロのようなボリューミーなものを食べたくなったのだった。

 味の話で言うと、グラコロはそんなにおいしいとはおもわなかった。グラタンのなかのマカロニや海老の主張が弱いのが気になった。でも、グラコロが好きなひともいるかもしれない。ぼくはあまり好きではないけれど。

 

 きのうはメンタルクリニックの日でもあった。

カウンセリングを受けた。ぼくのカウンセラーさんはなんとなく、元ギャル、みたいな雰囲気のあるひとだ。もともとはスクールカウンセラーをやっていたらしい。

きのうのカウンセリングではツイッターの話になった。ツイッターはたのしいけれど、やり過ぎはよくない。とくに寝る前にツイッターをするのは刺激が強くてよくない、という話になった。寝る一時間前、つまり二十三時にはツイッターを閉じたい。そうするとことで、眠りの質がよくなって、次の日の目覚めもよくなる。

 他には、最近、はじめた節約の話もした。いちにちに財布のなかから千五百円以上つかわないルールをつくった話をした。それをはじめてから、財布の中身の減りがゆっくりになった気がする。

 カウンセリングの後は診察だった。先生は五十歳くらいの女性で、眼がぎょろりとしていて、いつも陽気だけれど、なんとなく毒のありそうなひとだった。先生はカウンセラーさんが、カウンセリングのとき取ったメモに目を通してから診察をはじめるので、カウンセラーさんに話したことは先生に伝わっている。

「千五百円はつかいすぎじゃない?」と先生は言った。それから、先生は節約について話した。納豆がいいとか、もやしがいいとか、そういう話だ。しかし、ぼくもそれくらいのことは知っていた。問題は実践できないことなのだ。

「鶏むね肉とかがいいですよ」と先生が言うので、

「実は鶏むね肉は苦手なんです。パサパサしていて」と答えると、

「鶏むね肉をおいしく食べるのには技術がいるよね」と先生は言った。

 今回が今年最後の診察だというので、最後に「よいお年を」「今年はありがとうございます」と言うと、「来年はいい年にしましょう」と先生は言った。