ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

最近はまじめにやっている

 なんかいいことがないかな、とおもっている。

 

 すこし前の話だけれど、ポジティブ三行日記というものをしていた。それは寝る前にいちにちを振り返って、その日あったいいことを三つ書く、というものだった。続けるとポジティブな性格になってくるのだそうだ。うつにも効き目があると聞いた。

 それをやっていて気がついたのは、いいことを書こうとすると、がんばったこと、その日いちにちに達成したことを書きがちだということだった。もちろん、それはそれでいいことだ。人間は、自分でやるべきだとかんじていることがちゃんとできると気分がよくなる。でも、その一方で、「いいことがある」というのはそれだけではないだろう、ともおもった。

 どういうことかと言うと、がんばらなくてもいいことはあるはずだということだ。なにもがんばらなくてもいいことがある、そういうのが理想なんじゃないかな、とおもったのだ。その日、あったいいことに、その日がんばったことをつい書いてしまうのは、心の根っこの方で、がんばる教に侵されているためではないだろうか。

 ぼくがサラリーマンを辞めてから四年は経った。いまは作業所で働いている。働いていると言っても、誰にでもできる仕事だし、短時間だ。いちにちの半分は自由につかえる。そう言うと羨ましいとおもうひとも多いとおもうけれど、実際はやることがないということはつらいことだ。時間だけが有り余っていて、お金はない。そういう生活だった。

 毎日、やることがない苦しみに耐えながら、お金もないのにコメダ珈琲店に通っていた。家で何もせずにじっとしていることができない。その頃はいまより、うつっぽかったので、本を読むことや、映画を見ることも無理だった。

 そういう生活をしていて、その苦しみから、ぼくは自分ががんばる教の信者なのだということに気がついた。無意識に何かを信じていることって実はよくあるのだな、とおもった。

 

 職場から家に戻ってくるとアマゾンから荷物が届いていた。そのことはスマホで見て知っていた。ドアの前に包みが置いてあった。最近は置き配なので、玄関の前に荷物が置いてある。持って行こうとおもえば誰でも持って行けるな、とおもう。でも、誰も持って行かない、ということを信じている。つまり、ひとの善意をあてにしている。ぼくは扉の近くに置いてあった包みを持って家に入った。

 中身は中華イヤホンだった。中華イヤホンというのは中国製のイヤホンだ。中国製というと、その性能を疑うのがいままでは普通だったとおもう。でも、最近はそうではないらしい。少なくともイヤホンに関して言うと、中国製のイヤホンは安いわりにいい音が出るのだという。

 中華イヤホンは二千四百円した。ぼくはイヤホンに二千四百円も払ったのははじめてだった。性能のいいイヤホンは、いつかつかってみたいとおもっていた。早速、何か聴いてみることにした。最近、はまっているバンドの家主の新しいアルバム『DOOM』を聴くことにした。『DOOM』はシンバルの音からはじまる。その「カーン」という音がすごくかっこよく響いた。これが音のいいイヤホンか、と感動した。それから、自分は人生が変わったような気がした。人生を変えたいとおもっているひとがいるとすると、ぼくはまずツイッターを勧めるだろう。次に勧めるのはいいイヤホンを買って音楽を聴くことだ。それで人生が変わる。

 

 最近のぼくは疲れている。

 最近は実にまじめにやっている。具体的に言うと、ぼくはお酒を飲むのが好きだったんだけれど、それを週一に減らした。仕事が終わって、休日に入る夜にだけ酒を飲んでいいというルールをつくった。肝臓の数値が悪いので、まあそれも仕方がないかなという気がする。それに、ぼくはアルコールが入ると暗い気分になる。滅多に明るい気持ちにはならない。しかし、若い頃からの習慣でもあるし、酒飲みのプライドもあるので、いまも週一、と言いつつ飲み続けている。酒には強いほうだ。最近は寒くなってきたので、ワンカップ大関のジャンボサイズを温めて飲むことが多い。

 あと、ぼくはアイスクリームが好きだった。しかし、それも週一に減らした。いままでは毎日、晩ごはんの後のデザートにアイスクリームを食べていた。それをやめることにした。ダイエットのためだった。アイスクリームは、月曜日の夜に食べることにした。月曜日は一週間でいちばん苦い日なので、せめていちにちの終わりには甘いものを食べて自分を労いたい、とおもったのだ。それでルールを決めてから実際に一週間アイスクリームを食べなかった。一週間ぶりに食べたmowのバニラは身体に染みた。

 このようにして、ぼくは自分から生きるたのしみを奪っている。なにがうれしくてそんなことをしているのだろう。それにしても、ぼくのすごいところは、酒を週一にする、と決めて実際に週一しか飲まないところだ。アイスクリームも週一になった。それがルールだからだ。健康のためを考えるとそれがいいのは明らかだ。しかし、普通はそういうルールを決めても意志が弱くて守れないものだ。ぼくも若い頃はそうだった。でも、最近は自分がつくったルールを守るようになった。気味の悪いことだ。自分に何が起きたのだろう、とおもう。もう、一カ月くらい朝の筋トレが続いていて、それも気味が悪い。

 この前、北海道に住んでいる年上のツイッターのフォロワーに「熊野さんはまじめだ」と言われた。それはよく言われることだった。でも、自分で自分のことをまじめだとはあまりおもわないのだった。それはたぶん、あまりにもまじめなので、自分で自分がまじめなのだとわからないのだとおもう。まじめは損だ。もっと力を抜いて生きたいとおもう。でも、そういうふうにしか生きられないのだとおもう。

 あしたは有給だ。有給はお給料をもらいつつ、堂々と仕事を休めるすばらしい日だ。洗濯をしよう。そして、占い師のフォロワーと会う予定がある。占い師のフォロワーは大阪へ旅行していたので、そのお土産をくれると言っている。