ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

休日の過ごし方

 先週の休日にはしながわ水族館に行って、今週はサニーデイ・サービスの映画を見に行った。どちらもひとりで行った。

 しながわ水族館のチケット販売の行列にひとりで並んでいるとき、周りはカップルと家族連ればかりだったので、そういうひとたちに囲まれて、表情が強張り、心のなかに負の感情が湧きおこった。そういうひとたちがみんなバカで下品な人間のようにかんじられたけれど、その周りを下に見る感情は自分自身の劣等感から来ていることがわかった。ぼくの目の前でお互いに猫パンチをし合っているカップルだって、話してみれば案外陽気ないいひとなのだと自分に言い聞かせた。そして、こんな気持ちになっている時点で自分は負けているとおもった。大勢でいるのがたのしいひとと、ひとりでいるのがたのしいひとがいる。ただそれだけなのに、こんな風に惨めな気持ちになるのはぼくが悪いのだ。
 券売機の前に立って、しばらく操作してみたけれど障害者割引用の選択がなかったので、近くのスタッフさんに声をかけて、「この券売機に障害者割引はないんですか?」と聞いたら、別の窓口に案内された。そのことが惨めな気持ちを増幅させたけれど、なるべく平気なふりをした。

 このようにぼくは孤独だった。水族館のなかに入っても、周りはカップルや家族連ればかりで、それがすごく気になった。ただ、魚を見に来ただけなのに、すごく自意識過剰になっていた。
 しながわ水族館は、普通の水族館にはないコンセプトがあって、それは水族館を公園のような場所にするというアイディアだった。だから、館内の水槽の前に椅子が置いてあるところや、カフェが開いているところがあった。すごくいいコンセプトだとおもう。カップルが椅子に並んで座って、お互いにもたれかかり合いながらペンギンが泳ぐのを見ていた。子どもたちが七色に発光する綿菓子を食べていた。最近は綿菓子も七色に発光するんだな、くらいにしかかんじない無感動な自分に気がついた。

 ぼくはクラゲの写真を撮ってツイッターにあげた。ツイッターのみんながクラゲを好きなことはよく知っていた。いま、ぼくはひとりでいるように見えるけれど、ツイッターのフォロワーがいっしょにいるのだ、とおもうこともできた。
 なるべくひとが少ない場所にある椅子を探して座った。

 しながわ水族館スカイツリーのふもとにある。そこに行く途中に乗った長いエスカレーターの側面の壁、一面を埋めていた笑顔の高校生の集団の広告がおもいおこされる。アクエリアスポカリスエットか、とにかくそんなかんじだ。青春真っ盛りの運動部の高校生の若さが炸裂していた。率直に言うとおぞましいな、みたいな印象を受けたけれど、世の中にはそういうのをよしとするひとがいるから、こんなにも大きな広告があるのだ、という気がした。そのことについてあまり深く考えたいとはおもわなかった。趣味が合わないひともいるというだけなのだ。

 しながわ水族館の後、スシローでお寿司を食べた。ぼくはこうやって休日にひとりで出かけてはスシローに入っている気がする。
 これがしながわ水族館の思い出だった。

 今週はサニーデイ・サービスの映画を見に吉祥寺に行った。パルコの地下の映画館でチケットを買った。はじめて来る映画館だったけれど、なんとなく落ち着く雰囲気の場所だという気がした。浮遊感のある不思議な音楽が流れていて、映画のポスターがズラリといっぱいあって、ポップコーンの甘い匂いがした。はちみつみたいな匂いだ。はちみつのポップコーンなのかもしれない。
 映画がはじまるまで二時間あったので、まず、古着屋巡りをした。目当ては赤いアロハシャツだった。以前、ツイッターのフォロワーの集まりで、「まいたけさんは赤いアロハシャツを着たら似合うとおもう」と言われたので、それ以来、頭の片隅にずっと引っかかっていた。そんなの似合うわけないだろ、と内心おもっていた。赤は普段から避けている色だ。色自体が嫌いだとかいうわけではないけれど、自分のイメージに合わない気がしていた。でも、鏡の前で赤いアロハシャツを自分に当てて見ると意外に似合うような気がしてきた。
 この日は赤いアロハシャツを購入まではしなかったけれど、アロハシャツが似合う自分、という新鮮な発見があった。
 その後は、例によってスシローに入った。揚げ物とか、お肉のお寿司をよく食べた。カレイのフライのお寿司だとか、グリルチキンのお寿司だとかだ。その結果、揚げ物の匂いが身体に染み付いてしまった。
 映画がはじまる三十分くらい前に映画館に戻った。そのときも身体から揚げ物の匂いがしていた。映画館の椅子に座って上映時間になるまで待った。
 『ドキュメント サニーデイ・サービス』はいい映画だったとおもう。あまり人気のある映画ではないからか、座席が三列しかない小さなスクリーンでの上映だった。その三列をサニーデイ・サービスのファンが埋めた。
 ドラムの丸山晴茂が亡くなって、残りの二人のメンバー(曽我部恵一と田中貴)がドラムなしでの追悼ライブで演奏した『セツナ』にはグッときた。泣いた。

 そして、きょうは一日、家にいてとくに何もしないで過ごしている。
 ここ二週間、連続で遊びに行ったけれど、疲れた。ひとりで遊び歩くと寂しい、という気がするけれど、別に誰かと一緒なのも気疲れするというのはある。遊びに行くこと自体が疲れる。家で本を読んだり、音楽を聴いたり、映画を見たりしている方がいいのかもしれない。それでもこうしてブログに書くネタができるのはいいことだとおもう。