ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

フォロワーの印象

 フォロワーはタバコを吸っているとき「幸せです」と言った。フォロワーはヘビースモーカーのようだった。フォロワーの吸っているタバコはコンビニには売っていない。フォロワーと神保町を歩いていると、いろいろかわいいものや素敵なものが見つかった。とくに本屋にいるときはほしい本がどんどん見つかった。ぼくたちはエチオピアというカレー屋さんでカレーを食べて、瓶ビールをシェアした。「シェアした方がたのしいでしょう」とフォロワーは言った。

 

 フォロワーは「自分の人生は逃げてばかりだった」と言った。フォロワーはドイツのベルリンから一時的に帰国していて、きょうはぼくの家の近所のコメダ珈琲店まで来てくれたのだ。「子どもは親を信頼していないと反抗期が来ないものだ」という話になった。ぼくは自分の親には問題があったと話したけれど、ぼくには反抗期があった。そこで話が少しすれ違ったようなかんじがあった。コメダ珈琲店を出て、駅まで歩きながら、「また帰国したら会いましょう。こんどは秋くらいかもしれない」と言っていた。

 

 フォロワーとサイゼリヤで晩ごはんを食べた。ぼくはお腹が空いていた。メニューを見ているぼくを見て、フォロワーは「けっこうお腹が空いているんじゃない?」と言った。フォロワーにはぼくのお腹が空いていることがわかるのだ。「熊野さんに伝言がある。熊野さんはいつも暗いことばかり言ってるから、もっと明るくていいって言ってた」とフォロワーは言った。そして、「happiness」と書かれた黄色いピンバッチをくれた。「熊野さんには幸せになってほしいと言っていたよ」。ぼくはそのピンバッチを無印良品のリュックサックに付けた。

 

 フォロワーは古本屋で働いている。まだフォロワーは二十一歳だった。ぼくたちは三軒茶屋にあるコメダ珈琲店で三時間くらい話し込んだ。フォロワーはタイの映画監督のアピチャッポンの映画にハマっていて、その話をしていた。最近、恋人ができたようで、ゴールデンウィークは恋人と植物園に行くと言っていた。ツイッタラーは恋人ができて、幸せになるとツイッターに来なくなるという話がある。幸せになったのかどうかはわからないけれど、若いフォロワーを最近見かけなくなった。

 

 フォロワーとスシローに行った。フォロワーは実はスシローに来たのは初めてだった。ぼくはスシローの看板の前でポーズをとるフォロワーを撮影した。スシローは異様に店内放送の音量が大きくて、「耳が悪いひとがいるのかな」とフォロワーと話した。お腹いっぱいになるまで食べた後、フォロワーは「もしも、この後、まだ食べるとしたら、何を食べるか空想する遊びをしようぜ」と言った。変なことをおもいつくひとだ、とおもった。「玉子かな。まだ食べてないし」とぼくは言った。

 

 フォロワーと雨の吉祥寺で映画を見た。『コーダ あいのうた』という映画だった。ぼくはいい映画だとおもったけれど、フォロワーはけっこうシビアな感想を言っていた。映画の後で、サイゼリヤに行った。ぼくは「結婚のお祝いに奢るよ」と言ったが、断られた。フォロワーは結婚した後で半年くらい外国を旅するのだと言っていた。トルコに行って、それからヨーロッパをぐるぐる回って、スペインを横断する。その後、エジプトに行くかもしれないし、インドに行くかもしれないとフォロワーは言った。