ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

転職します

土曜日はオフ会だった。それはけっこう前から決まっていた。ワンカップとおでんのオフ会のはずだった。でも、店が閉まっていたので、ワンカップもおでんもなしになった。その日はぼくも含めると、四人いた。中猫さんとnさんとさかなちゃんとぼく(熊野)で四人だった。ぼくたちは自然の多い公園の池の周りを一周してから、焼鳥屋に入った。寒かったので暖かい場所に入れてほっとした。

 ぼくはドライアイのせいで眼が開けていられなくなった。その結果、なんとなく傍から見ると、瞑想しているみたいなかんじに見えるようになった。それが嫌だったんだけれど、眼は開かなかった。目薬は家に置いてきていた。そして、酒を飲めば、飲むほど、おしっこが近くなって、何度もトイレに行った。その結果、「調子が悪いひと」として認識されることになった。酔っ払っているのだろう、とおもわれていたけれど、自分のつもりではそんなに酔っ払っていなかった。でも、それは信じてもらえなかった。そのうち、自分でも酔っ払っているのだろう、とおもうことにした。

 さかなちゃんは途中で帰った。家に帰って勉強したいのだ、と言っていた。さかなちゃんが去ると、「さかなちゃんって何者なんだ」と言うので、「占いと短歌のひとです」と答えたけれど、それじゃあ謎が深まるばかりなので「いまは無職のようです」と付け加えた。そう言うと、ますますわけがわからないひとのようになってしまうな、とかんじた。

nさんはかなりお酒が好きのようで、「まだまだいけます」という風なので、それに付き合って飲んだ。ぼくは相変わらず眼が開かなくて、「横になってもいいんだよ」みたいに言われていた。かなり飲んだような気がする。その焼鳥屋はあまりいい店ではなかったとおもう。でも、四人で合計一万二千円くらい飲み食いしたことになった。

 店の外に出たらとても空気が冷たかった。空に白い月が浮かんでいた。ほとんど満月だった。はっきり言って早く帰りたいなあ、という気持ちが強かったのですこし安心した。電車を乗り継いで家に帰った。服を脱いだら焼鳥屋の匂いが服に染み付いているのがわかった。

 

 日曜日になった。日曜日は何もしないことにした。ぼくは最近疲れているので、ほんとうは何もしたくないという気持ちもあった。よく晴れていたけれど、冬なので陽射しは淡かった。布団を干した。映画を見て、カレーをつくることにした。朝、体重計に乗ったら、いつもより一キロくらい少なくて驚いた。きのうはけっこう飲んだ気がするのに、逆に痩せているのだった。

 昼前に近所のスーパーに行った。ぼくは、いちにちに千五百円以上つかわない決まりをつくったので、千五百円になるように頭のなかで考えながら買い物をした。カレーの材料の他にスーパーのなかに入っているパン屋のピザがおいしそうだったのでそれをお昼ごはんにすることにした。お昼ごはんはピザとコーヒー。夜はカレー。デブの食事だ。

 午後は何をしようか迷った。映画を見るのを先にするか、カレーをつくるのが先か、という悩みだった。でも、ピザを食べたばかりだったので、お腹がいっぱいで料理をする気になれなかった。

映画を見ることにした。映画は『音楽』というアニメ映画をアマプラで見た。いつも退屈している三人組の不良がバンドをはじめる、という話だった。気の抜けたかんじの絵柄と『音楽』というシンプルなタイトルが合わさって絶妙なかんじだな、と見る前からおもっていた。見終わってからも期待通りだったな、という気がした。いい意味でも悪い意味でも期待通りだったと言えるだろう。そう言うとけなしているように聞こえるかもしれないけれど、かなりよかったのだ。最初からけっこう期待していたという意味だ。

 映画を見た後はカレーをつくった。ルーはいつもジャワカレーの中辛をつかう。こんな風に、いつも休日になるとひとりで映画を見て、カレーをつくったり、シチューをつくったり、おでんを煮込んだりするのだった。休日をそういうふうに過ごすひとは多いのだろう。そういう何もない休日はけっこう好きだ。でも、なんだかマンネリな気もする。マンネリだな~、とおもった。

 

 月曜日になった。月曜日は仕事が終わってから、家でスマホのバックアップをとっていた。容量がいっぱいなので、バックアップアプリをつかって、バックアップをつくった。最近はスマホがすぐ落ちる。勝手に再起動する。バッテリーの持ちが悪くて、すぐ充電が一パーセントになる、というようなことが続くので、そろそろ買い替えることにしたのだ。そのためにバックアップをつくることが必要だった。

 バックアップをとっている途中で支援者さんからラインが来た。それによると、ぼくは面接に受かったのだった。これで転職がうまくいったことになる。最初はコメダ珈琲店で働こうとおもって、コメダ珈琲店に応募したんだけれど、それには落ちた。ほんとうはコメダの店員になるつもりだったのだけれど、他の仕事をすることになった。詳しくは書かないけれど、あるショップの店員になることになったのだ。

 ぼくは、三年半くらい前にサラリーマンを辞めてから、ほとんどニートのような生活を送っていた。ニートと言うと言いすぎかもしれないけれど、いまはいちにちに二時間しか働いていない。それが、ある店の店員になったことで、生活が変わることになった。しつこいようだけれど、ほんとうはコメダ珈琲店の店員になりたかったのに、こういうことになったことを喜ぶべきなのかどうかぼくにはわからなかった。たしかに言えることは、労働時間が増えるぶん、収入が増えるということだった。五万円は増えるのではないだろうか。複雑な気持ちだ。

 支援室に行くと、支援者さんが「がんばって稼いでくださいよ」と言った。そう言われたら、辞退しようかという迷いもなくなった。支援者さんに背中を押してもらいたくて支援室に来たのだ。その場で人事部に電話して仕事を受けることを伝えた。電話が終わると、「熊野さんはもう少し上手に話せるといいですね」と支援者さんに言われて、その通りだなとおもった。