ミツオ日記

自称詩人 熊野ミツオの日々

知らないひと

きれいな朝にひとりで目覚める

きのうのことさえ何も覚えていない

 

ぼくは家を出て

電車で隣の街に行った

知らないひとに道を聞かれたけれど

何も答えられなかった

ぼくは笑い方を知らない

 

ぼくは自分で自分のことをよく知らない

それなのにぼくは働かなくてはいけない

 

本物の小鳥の鳴き声には喜びがある

ニセモノの小鳥の鳴き声は規則的だ

次の季節にはきっと会おうと約束している

生きている

空が青から水色に変わった

 

夜になって

ぼくは家に帰ることにした

掌が白く汚れていた

ぼくは罪を犯したのだろう

いまはただ早く家に帰りたい

 

もういちど水のなかで

呼吸をしたいと願っていた

夢のなかでも

ぼくはひとりだった

そこの曲がり角を曲がるまでは

ぼくは知らないひとだった